披瀝

分かりますか?

彼らの目、綺麗な色をしている。

しかしね、私たちにとっては害でしかないんですよ、あんなの。

自分より醜いものを見る目というのは、汚くも見えますがそれ以上に輝いているように思います。

違います?

 

彼らには私の痛みなんて分かりません。

精神的なものも、肉体的なものもね。

人間ってのはそうなんですよ、あなた。

私も例外ではありません。

まあ、彼らのことなんて理解したくもありませんがね。

 

例えば、銃で心臓を撃ち抜かれるとか、ナイフを腹に突き立てられるとか、或いは。

首を吊ったとしてもね。

自身が抱える罪悪感から自らを手にかける人間というのは、どのくらいいるんでしょうね。

要するに私がやりたいのはそれなんですよ。

 

いやいや、あなたは特に関係は無いんです。

ただちょっと話を聞いて欲しくて。

私があなたに感じている魅力は並大抵のものじゃあないんですから。

感謝しているんですよ、とても。

 

私はやはり独りでいたいと思った時期がありました。

人間は、他人を馬鹿にできるほど偉くはないんですから。

誰だってそう。

それに気づいてしまったらね、あなた。

私は何か得体の知れないものに押しつぶされてしまっていたでしょうよ。

とても耐えられなかった。

もっとも、今ではそれが何なのか分かる気がするんです。

恐らくそれは、他でもなく罪悪感です。

それからひたすら逃げるために、この部屋で独りよろしくくつろぐようになったんです。

 

これは昔話ですが、今でもごく最近の事のように思えるんです。

それとも、これは昔話なんかではなく、現在も進行している一種の病かもしれませんね。

そんな大層なものではないんですよ。

ちょっと熱が出そうな程度です。

熱。

そう、最近は冷えますから、風邪には気を付けてくださいね?

貴重な話相手が離れてしまったら、私は寂しいですよ。

 

ええ?そうですか。

大丈夫でしょう。

苦悩は晴れます。

最悪な形ではないとは言っていませんよ。

苦悩というのがきれいさっぱり無くなるのは、死んだ時だって同じですから。

一日に何十の迷信に惑わされるのはもうたくさんでしょう。

 

信じてくれてもいいんですよ。

悪い人間ではないんです。

少なくとも、私と貴女はね。

 

言いたいことは山ほどあります。

でも、中には、絶対に言葉にしてしまいたくないものもあったりするんです。

気持ち分かります?

分からないですか。

要は、誰かと共有したくはないんですよ、その言葉を。

自分だけの想いであってほしいと願ってるんです。

 

その上でのコミュニケーションですから、そりゃあ誤解も生まれるでしょう。

誤解の無い真の悪意は、私が最も嫌う物の一つですが、

時々、なぜかそれがどうも愛しく思える時があるんです。

不思議ではないんですよ。

だって、それが人間でしょう?

捻くれもせず真正面から、「こいつは人間だ」って認めることができたら、それは素晴らしいと思いませんか。

元から汚くて狡いんですよ、人間ってのは。

これは前にも話しましたね、よしましょう。

 

あら、雪ですね。

最近は冬もすっかり温まってしまって、味気ないにも程があるような気がしますね。

人間には無いものを盛大に映し出してくれるんですよ、純白の世界というものはね。

誰もが羨むような感情をお持ちですか?

私にはたくさんありますよ。

言えませんけどね。

 

雪は夜でこそ魅力的なんですが、いつまでも付き合ってもらっていては、あなたも迷惑でしょう。

お帰りなさい。

ここよりもずっと温かい家に帰るのです。

いえ、気にしないでください。

明日会えるかどうかも分からないのに、

軽い言葉で済ませられないのは分かりますが、

あなたを大切にしているのは私だけではないんです。

ほら、行きなさい。

希望を持てとは言いませんよ。

ただ明日があるようにだけ願っていてください。

そうすれば、またお話できるでしょう。