上を向いて歩いた。
でも、見えるのは真っ暗な空と、真っ黒の電柱。
あとは電灯。
その光はいつも小さい。
忙しなく動き回るこの街では、星空なんてまともに見えやしない。
涙は出ないけど、なんとなく悲しい景色だった。
縁石に足を引っ掛けて転びかけた。
一年前、同じようにして転んで負った膝の深い傷を思い出す。
この跡はもう無くならないようだった。
今日も空回りと勘違いを繰り返して、いつもと同じことを考えながら歩いた。
車のライトが眩しい。
目によろしくない。
正面から照らされるのは、自分が心の内の何もかもを隠しきれていないように思えて腹が立った。
線路を渡り切ったところで踏切が喧しく鳴り始めた。
まだ内側に残っていた自転車がスピードを上げて僕のすぐ横を飛んで行った。
いつもの事だしなんとも思わないけど、他の誰かなら怒っただろうか。
僕なら怒っても声が出せないだろうが。
これで何回目だろう。
この場所でこれについて考えるのは。
と、思うことすら何度繰り返したか分からない。
寝て日が変わる度に脳みその一部分がリセットされているような感覚。
誰かの言葉に翻弄されるのを避けながら生きて、気づけば自分が自分をおかしくしている、なんて。
他人に大切なその基準を任せないと生きていけない。
これが「人間は一人じゃ生きていけない」の真実かと。
笑える。
下を向いて口角上げて、気持ち悪いな。
でも今なら、ばれないだろう。
ずっと暗い場所に居よう。
僕なら分かる事がたくさんあるんだって知ってる。
それと目に優しい。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー