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親しい誰かが死ぬ想像。自分が死ぬ想像。
そこに隠れている喜びはいつもどこかで願ってきたもので、真っ白な部屋でしかあり得ない幸福な死だけを思い浮かべて祈っていたもの。
それでも、少しの間の痛みや悲しみがそれを覆って見えなくする。
自分が死を選んだら、もう頑張らなくていいんだ、みたいに。
息が出来ない、水面からようやく顔を出した時みたいに。
死んでしまったら、ひたすら深呼吸ができたらいい。
僕が願う人なら誰でも、きっと楽になれたらいいなと思う。
それが誰のことでもいい。

 

選択をしたいと思っている。
気の準備もないまま、殺されてしまうのは残酷だことだから。
まさに殺されることと、心臓に自分の針を刺すことは区別できる。

 

それでも、
選択を逃れたいとも思っている。
責任感の吹っ飛んだ誰かがいつの時代も叫んでいるように、現実感の無い花畑を歩く想像は難しいけれど。
何かを選び取って残りを捨ててしまうことが恐ろしいと感じないことは無かった。

 

―――――

 

みんなが孤独を歌にした。
触れる物は孤独、孤独、黒いシミが伝播していく。
誰にも隣り合っていないと言う癖に、それは確実に伝わっていく。
変わってしまった僕の心は人の孤独に唾を吐いた。
何よりも強く主張しようとして手を伸ばした人を嫌った。
何も強調しないことが趣味の良さだなんて思っちゃいない。
空虚な街で新聞を読んでいるだけならそれでいい。
でもそれで、本当のものを隠してしまうのはお前たちだと。
死んだ仲間の隣で同じ格好、死んだふりをしてまで。
目印ひとつをもらうことだけに必死になって。

 

胸が詰まって動けなくなるような、悲しい話を聞く。
僕では耐えられないから、僕ではその苦痛や孤独を無意味にしてしまうだけだから、と言って目を背けた。
どうしようもないと言い放ってしまえば、自分だけ楽になれたと思う。
もし何かできることがあっても、もともとこんな不安定な地面の上で願ってたら、受け皿の見つからない幸福になり下がってしまうような気もした。
そんなものいらない、とも言えない、けど手に余ってしまう。
明け渡すほど他人に価値を見いだせない。
どうしようもないじゃないか、と息を吐いている。
「楽になれたらいいなあ」
切実な感情というものが本当に心に染み込むものであってほしいと願ってる。