要約

 みんながやってる生活や、そのほかの遊びやもろもろの出来事に乗り遅れながら、今日もなんだかやる気のないのがバレないように努めるだけで終わった気がする。桜が散ってからは緑になるのが早いなと、毎年同じことを思っては忘れている。久しぶりに雨が降ったらしいことも、イヤホンを外して初めて音に気がついた。もし気づかないまま雨が止んでしまっていたら、イヤホンを外した瞬間は何か違うことを考えていたのかな。それは何だっただろう。

 


 「人の多い場所が嫌だ」と言うたびにますます人の多い場所が嫌になっていることは、自分でもわかっている。あそこに爆弾でも投げられたらねってつまらない冗談を言いふらしているのが、呪詛になってるのも分かってる。いまだに他人に興味をもってるなんてばかばかしいよと遠回しに言われたりも(けっこう)するのだけど、自分はそう言える人がうらやましいと思うし、うらやましいと思う身分にいながらこれでいいのだと思ってしまう。今からだいたい1年前の時期のことを頻繁に思い出すようになったのが、結局自分はどんどん弱くなっているみたいだと気づかせる。日に日に頭が悪くなり、人のいない方角を向き、記録に残らない1日を確実に塗りつぶしていく。最近特に、人間が無理だと思う。

 

 

 「現場」でよく見る指差し確認を見よう見まねで真似してみても、ぬぐえない不安が眠りにつくのをひたすら邪魔してくる。あれにいったい何の意味があるんだとイラつきながら、自分の目が信じられないなら結局手に残る痛みで身に叩き込むしかないだろうと、冷蔵庫の扉を思いっきり叩く。突き指しない程度に痛む。明らかにしてしまえばとても恥ずかしくてたまらないような不安と確認を繰り返す生活を、言葉にすることで解決できるなんて思ってない。でも、少なくともそうやって1枚や2枚の壁を壊しながら、明日、今日よりも安心できる理由を探している。「仮に」「万が一」が脅迫するのを止めるなんて不可能だと思い始めているけど、かつて何も疑わなかった幼い自分がいたことだけを頼りにしている。まずはお医者様の言いつけを守ることから始めよう。と気を引き締めた新しい生活は2日で終わった。