失効

 チェーン巻いたヤマトのトラックが物凄い音をたてて横を通り過ぎていく。その瞬間がすごく怖い。踏切でバーのそばに立って列車が通り過ぎる瞬間も同じ。大きい音に襲われて何も聞こえてない数秒間で、後ろから刺されそうな気がしてならない。でも身動きが取れなくって、振り向きもしない。その短い時間の間に、パニックに陥っている。小さい頃、大きい駅で新幹線が通過していくときいつも怖くて泣いていた。それは、今でも怖い。この間駅で、本気でビビってしまった。

 

 帰り道で気持ち悪くなった。街やバイト先でたまに遭遇するゴミクズみたいな人のことを思い出して、中には相当歳をとっているやつもいて、どうしてその歳まで生きてきてしまったんだ、どうして生きてこれたんだと言いたくなったりする。恥ずかしくないのか、息してて。すれ違う人間、人間みんなにこいつらみんな嫌だ逃げたいって思って足滑らせながら家に帰って、一人になれたと思ったらいつもの不安が戻ってきて気分が悪くなる。

 

 たまに日記を見返す。「意外と大丈夫だった」「だからこれからも大丈夫」なんて書いてる自分の精神状態をいまは全力で否定できる。どうしてこんなこと書けたんだ自分は。たぶん数日先の自分に自信持たせようと思ったんだろうけど、無理だよ、そんなの。いくら願っても逃げられない問題がいくつも待ってるのに、そんな気持ちになれないよ。いまの自分、不安と恐怖のなかにいる自分が一番間違いなく現実を見てる。そう思う。疑いようのない不安に首を絞められる。首を絞めたくなる。